広島簡易裁判所 昭和28年(ろ)216号 判決 1953年11月12日
主文
被告人を罰金二万円及び第二乃至第六の事実につき各拘留四日に処する。右罰金を完納できない時は金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
「事実」
被告人は、広島地方裁判所昭和二十七年(わ)第一二三七号被告人大林一美外四名に対する殺人等被告事件等につき同裁判所より証人として
一、昭和二十八年二月十八日午后一時半
二、同 年三月十七日午前十時
三、同 年四月八日午前十時
四、同 年同月二十二日午前十時
五、同 年五月十八日午后一時
六、同 年六月五日午后一時半
の各公判期日に出頭すべき旨の召喚状の送達を受けながら、右各期日に、正当な理由なく出頭しなかつたものである。
「証拠」
一、被告人の当公廷における供述
一、検察事務官作成の被告人に対する各公判期日の証人召喚状の送達報告書謄本六通
一、裁判長裁判官三井明作成の捜査事項照会に対する回答
一、検事に対する被告人の第一回供述調書
「適条」
刑事訴訟法第百五十一条
刑法第四十五条、第四十八条第二項、第五十三条第二項、第十八条
刑事訴訟法第百八十一条
「被告人の主張に対する判断」
被告人は当時生命危険に曝されていたから、出頭できなかつたのであると主張するので、右主張が、所謂期待可能性に関する主張に該ると解して、右の点に関する当裁判所の判断を示すに、証人進藤敏明の証言及び被告人の供述によると昭和二十七年十一月頃から岡組と村上組との間に対立抗争を生じ岡組と縁故のある被告人も村上組の者より狙われ、自宅を襲撃されたようなこともあつたことが認められるが、かかる事実から直ちに被告人が証人として出頭できない程危険であつたと認めることはできないし又被告人は、検察官の取調に対して、何等かかる生命の危険に関する主張をして居らず、却つて被告人の一存で出頭しなかつたことが明らかであり、その他右主張を認容するに足る証拠は何も存しないから採用できない。
よつて以上の通り判決した次第である。
(裁判官 加藤宏)